指導方針


■演奏スタイル
ビッグバンド又はジャズ・オーストラと呼ばれているスタイルで、基本的な編成は、アルトサックス2本、テナーサックス2本、バリトンサックス、トランペット4本、トロンボーン4本、それにドラムス、ベース、ピアノ、ギターなどで構成されたものを言います。
一般的な吹奏楽と違うことを言えば、それはジャズという音楽を演奏することです。
ジャズはアメリカで生まれたものであり基本が英語で表現される音楽であること。
それと、4ビートと呼ばれるスウィング(Swingリズムが基本であること、これは楽譜の記載された音符と実際に演奏するリズムが違うことも注意する点です。
基本的には八分音符が次の様になります。
  
 




楽器の基礎的な奏法を基本に、吹奏楽などに必要なものに加えてジャズ特有の表現方法などの奏法指導、演奏表現指導を行います。
楽器の基礎奏法に工夫を加えた指導方法により、効率的な練習法を確立することによって、クラシックやジャズなどのジャンルに拘らない高度な楽器奏法の習得を効率良く行います。
またビッグバンドにおいても、ソロを取る場合にはad lib(アドリブ)improvisation(インプロビゼーション)と言われる、即興演奏が要求されることがあります。これらについてものジャズらしいフレーズの組合せを解り易い教材を使い少しずつ演習を行います。
ジャズはアメリカにとってかけがえのない貴重な国家財産であり、その保存と理解および普及のために資金援助が行われています。そのためたくさんの教材があります。それらの教材を効率良く使用して指導を行います。
英語教育に於いても課題となっています日本語特有な子音+母音の単純な発音(カタカナ英語)ではジャズという音楽の発音表現もうまくできないという問題があります。
それを補うためにジャズなどの欧米ランゲージの表現方法としてのシラブル【 Syllable (発音・音節)の確立によって、楽器の発音方法やコントロール、アンサンブルに於いての表現方法を統一できることにより効率よく行われます。

■シラブルについて
シラブルには2つの意味があります。
1つ目は、管楽器の音を出すうえでのピッチのコントロールに必要な舌の形による口腔内変化をシラブルの発音で形成します。
アーバンに【 tu 】と書かれているので、日本ではタンギングのシラブルは「トゥ」であると指導されがちですが、アーバンの著者はフランス人であり、彼らが使っていたフランス語では、【 tu 】は実は発音としては【 du 】に近いものであるという説もあります。
正しいシラブルで発音することで、正しい奏法につながることになります。
2つ目は、アンサンブルに於いてのシラブルの組み合わせによるフレーズの表現を統一し、それをスキャットする事によって音符では表現のできないフレーズの表現を共有することができます。
日本の吹奏楽では「ター」「タン」「タカ」「ターン」などの発音表現がよく使われていますが、それに加えて次の様な発音(シラブル【 Syllable 】)を使用します。
doo (ドゥー) dah (ダァ) dots (ダッ) bah (バァ) be (ビィ) gu (グゥ) ga (ガァ) shu (シュ) ku (クゥ) wah (ワァ)・・・他など。
例に上げると、フレーズの表現としては【 ta ta ta ta 】ではなく【 shu be doo bah 】などの発音でスキャットすることでジャズらしいものになります。そして楽譜では表現できないものをみんなで表現を統一することができます。

リズム感について
スウィングはリズムではない、表と裏のニュアンスである」と言っている人がいます。
楽譜に記されているテヌート、スタッカート、アクセントの意味を汲み取るようにすること。
1拍の表裏は「母音」によって表されます、表は【 U 】、裏は【 A 】です。
つまり、【 UAUAUAUA 】で1小節。
練習方法としては、実際に口で【 UAUAUAUA 】(ウアウアウアウア)と、ゆっくり言ってみる。
次に実際に楽器を吹くように唇をあわせて(腹話術みたいに)言ってみる。
タンギングは「子音」を担います。ジャズの場合、たいてい【 D 】とかもっとゆるい場合は【 R 】です。
つまり、【 DUDADUDA 】【 RUDARUDA 】【 UDAUDA 】などとなります。
英語ではこれを【Doo-Dah】と記しています、実際には【 U-R-D 】の間を適度に選択しています。
鋭いアクセントが必要なときは【 T 】を使い【 Tah 】と発音したりします。
この母音と子音の組み合わせが、一番大切だと言うことです。
4分音符(休符)でも、2分音符(休符)でも、すべての音符と休符を、基本ビートのグリッドにはめ込んで演奏すること。スウィングで4分休符がふたつあれば、「ん、ん、」でなくて、「んあんあ」と無音で歌って演奏する。休符とは、「休み」ではなくて「無音で演奏する」だと思ってください。

アンブッシャーについて
トランペット及びトロンボーンは、ハイノートにも自由度の高いジェローム・カレの「スーパーチョップス奏法」を中心に行います。
サックスについては、「ファットリップ奏法」を中心に、フラジオやサブトーンなどのジャズに要求される奏法をマスターします。

ビブラートについて
吹奏楽では「揺れない真っすぐな音を出しなさい」と言われますがクラシックでもバイオリンなどはソロでもオーケストラでも必ずビブラートは使いますね。
ビブラートには、トランペットで言うと楽器を前後にゆらすビブラート(ピッチがかわる)と、息の量の変化をあごでかけるモデュレーションビブラート(ピッチがかわらない)との二種類があります。
曲の表現方法としてのビブラート(前者)とアンサンブルでの音の広がりに有効な(後者)その両方を使い分けます。
音楽の表現としてもアンサンブルの音の交わりの効果としてもビブラートは重要な要素となります。

シェイクについて
シェイクは「リップスラー」ではなく「極端なビブラート」と考えます。
ビブラートには(前記)の楽器を前後にゆらすビブラートと、あごでかけるモデュレーションビブラートとの二種類があります。
どちらでもやりやすい方のビブラートを「極端に」すればよいが、モデュレーションビブラートができる方が好ましいです。
楽器をつけると倍音に制約がかかるので、まずはマウスピースだけで練習してみるとよいです。
低音ではかけづらいし無理にかけてもハーモニー感が悪くなるので、3rd4thなどで低音でシェイク指示がされている場合はトリルでいいと思います。同音替え指での「パラパラ」でもよいでしょう。

ハイトーンについて
ビッグバンドでのトランペットやトロンボーンによるハイトーンは吹奏楽と違った華やかさを感じる特有なものです、この要素を奏法の確立によって習得いたします。
ハイトーンは「勢い」「根性」「パワー」ではありません。裏声( falsettoflagioletto )のようなイメージです。地声でいくら力んでも出ないものは出ないですね。
パワー以前に、唇がその音を出す状態になっているかどうかが大事です。まずは、蚊の鳴くようなちいさい音で練習します。押し付けず、引っ張らず(口を横に引くの意味)、息を使わず、自分の出せる最高音を超ピアニシモで出してみます。その時に重要なのは舌の位置、舌の形と喉の状態。喉の状態は実際に裏声を出してみて、地声との違いを感じてみると良いでしょう。
ここでもシラブルによって口の中の状態を作ります。口笛を吹いてみて高い音の時に舌の状態がどう変化するのかを参考にするとよいでしょう。楽に出るようになったら徐々に大きくしていきます。
よく「息のスピードを上げろ」と言う表現をする人がいますがこれは誤解を招きやすいですね。
息の量は音が高くなれば極端に使う息の量は少なくて済みます。
でもハイトーンで大きな音を出すと言うことは、その息の量を少し増やさなければなりません。
と言っても低音の時の息の量ほどは実際には必要ないのです。
高い音に合った唇の振動は当然ですが狭い隙間から息が出る事になります、その狭い隙間から出る息の量を多くするということは、それに必要なのは息の圧力です。
その息の圧力を高めるには少しトレーニングが必要になります。
そしてその時に最も重要なのはマウスピースに必要以上にプレスしないことです。
当然息の圧力が高くなるのである程度はプレスが必要になりますが、極端に力んだ状態の必要以上のプレスはその事によって息が通らなくなります。つまり、唇を力まないで息の圧力を上げるトレーニングを行います。

■練習曲
当面の練習曲として初級・中級用のビッグバンド楽譜を準備しています。
良く知られているジャズの曲を中心に15曲を集めたものでグレードは2であります。
この楽譜にはフル録音の模範演奏CDが付録されています。
曲目は順次増やして行きます。

EASY JAZZ FAVORITES
初級~中級ビッグバンド向けビッグバンド曲集
出版社:Hal Leonard
グレード:2
1. A Nightingale Sang In Berkeley Square
2. Ain't Misbehavin'
3. All The Things You Are
4. Blue Train (Blue Trane)
5. Caravan
6. Chameleon
7. Fly Me To The Moon (In Other Words)
8. In The Mood
9. Inside Out
10. Milestones
11. One Note Samba (Samba De Uma Nota So)
12. Route 66
13. St. Louis Blues
14. The Girl From Ipanema (Garota De Ipanema)
15. When I Fall In Love
THE BEST OF EASY JAZZ
初級~中級ビッグバンド向けビッグバンド曲集
出版社:Hal Leonard
グレード:2
1. All Blues
2. All Of Me
3. Beyond The Sea
4. Boogie Woogie Bugle Boy
5. Freddie Freeloader
6. Green Onion
7. Hey Jude
8. In A Sentimental Mood
9. Kansas City
10. Respect
11. Saxes With Attitude
12. Sesame Street Theme
13. Sidewinder
14. Tuxedo Junction
15. 25 Or 6 To 4
IT'S ONLY A PAPERMOON
作曲: HAROLD ARLEN   編曲: MICHAEL SWEENEY
出版社:Hal Leonard
グレード: 1 1/2
ON GREEN DOLPHIN STREET
作曲: BRONISLAU KAPER   編曲: RICK STITZEL
出版社:Hal Leonard
グレード:2
THE WAY WE WERE
作曲: ALAN BERGMAN MARILYN BERGMAN, AND MARVIN HAMLISCH   編曲: MARK TAYLOR
出版社:Hal Leonard
グレード:4
MISTY
作曲: ERROLL GARNER   編曲: TERRY WHITE
出版社:Belwin
グレード:1
Gonna Fly Now
作曲: CONTI/CONNERS/ROBBINS   編曲: VICTOR LOPEZ
出版社:Belwin
グレード:2
September
作曲: Maurice White / Al McKay / Allee Willis   編曲: 中路英明
出版社:WindsScore
グレード:4
●宝島
作曲:和泉宏隆   編曲: 羽毛田耕士
出版社:ベル・ミュージック・プレス
グレード:4
SECRET LOVE
作曲:SAMMY FAIN   編曲: DAVE WOLPE
出版社:Belwin
グレード:3
Pick Up the Pieces
作曲:ROGER BALL MALCOLM DUNCAN, ALAN GORRIE, HAMISH STUART, RABBIE MCINTOSH, AND OWEN MCINTYRE   編曲: VICTOR LOPEZ
出版社:Belwin
グレード:3
※クリスマス用
Santa Claus is Coming to Town
編曲: MIKE LEWIS
出版社:Alfred Publishing
グレード:2
 HAVE YOURSELF A MERRY LITTLE CHRISTMAS
作曲:HUGH MARTIN RALPH BLANE   編曲: ALAN BAYLOCK
出版社:Belwin
グレード:3
 I'll Be Home for Christmas
編曲: GREG YASINITSKY
出版社:Alfred Publishing
グレード:3
White Christmas
作曲:IRVING BERLIN   編曲: MICHAEL SWEENEY
出版社:Belwin
グレード:2

■基礎練習
また、基礎的なジャズの感覚を養うためと毎回必ず行うウォームアップの用途として次の楽譜を準備しています。
ビッグバンド編成の楽譜で、ジャズ・コラール、ドゥー・ダッ、メジャースケールとメジャー・セブンス・コード、キックスの4つセクションに分かれて、どのセクションも短いいくつかの練習に分かれています。フレーズはとてもシンプルで、初中級者がジャズの基本的な感覚を磨くのには向いています。

THE TEN-MINUTE JAZZ WARMUP
編 成:AATTB 4Tp 4Tb PGBD
作編曲:JIM MAHAFFEY
出版社:Southern Music
グレード:4
Part 1. Jazz Chorale
Part 2. Doo-dots
Part 3. Major Scales and Major 7th Chords
Part 4. Kicks